ロンボク寺の彼女

前にも書いたけど、チョモランマのベースキャンプまで来たのは
今回が初めてではなく、2007年にも一回訪れたことがある。

前回は、今回のホテルでなく砂利道の脇に設営された観光客用の
テントに宿泊した。テントの中で大勢のお客を相手に切り盛りしているのは
まだ20歳にも満たないであろうチベット族の女の子だった。

思い出だから多少記憶の中で美化されているかもしれないけれども、
愛嬌もあるし、都会の子には無い純朴さがあって、とても可愛らしい印象が
強く残っている。

その日は、目前のチョモランマに興奮して、辺りをうろうろと動き回ってしまった為、
高山病にかかってしまい、テントの中で一晩中頭痛と戦う羽目に陥ってしまったん
だけど、彼女が一晩中そばに寄り添って看病してくれた。

朝、彼女が作ってくれた食事を美味しいと一言言っただけで、子供の様に喜んで
いたし、ランクルに乗って麓に帰る時には、映画に出てくる少女のように息が切れて
動けなくなるまで手を振りながら車を追いかけてくれた。

たった一晩テントに泊まっただけなんだけど。。。
意識が朦朧としている間に、一体どんなロマンスがあったのかと、思わず自分を疑って
しまうくらい、一生懸命尽くしてくれた事は本当に忘れることが出来ない思い出だ。

今回の旅行でもひょっとしたらもう一度彼女に会えないかなと、ほのかな希望を持って
出かけたんだけど、まあ冷静に考えてドラマ見たく、そんな都合の良い事はそうそう
起きないだろう事は分かっているつもりだった。

で、ロンボク寺の話に戻る。ガイドさんたちチベット族がみんなで参拝に行くので
僕もお願いして連れてってもらった。そんなに広いお寺でも無いので境内の仏像を
拝んで少し休んで帰ろうとしたところ、

突然、彼女がやって来た。天秤に野菜をいっぱい詰め込んで。

前会った時と違って、民族衣装を着てないし、小さかった背も伸びて少し大人になって
いたけれど、間違いなく彼女だ。あまりに突然の事だったので、びっくりして言葉が
出てこない。というか、会えると思ってなかったので何を話していいか言葉を準備して
無かった。。。

暫く固まっていると、ガイドから大きな声で呼び駆けられる。
「おーい、ぱふぱふさん。いっしょにヤクの干し肉食べましょう!」

はっきり言って今はそんな場合ではないのだが、突然襲ってきたプレッシャーから
逃げようとしたのか、何故かガイドの所に行って肉を切り分けてく貰う自分。。。
というか、この肉切ってる兄ちゃんもテントに居たよな。(仕事してなかったけど)

肉を食っている間に、いつの間にか彼女は奥の部屋に消えてしまった。

こんな事を書くと、女々しいだの、決断力が無さすぎるだの、見ていてイライラする
だの言う輩が居ることは百も承知で言わせてもらうと、あそこで彼女に声をかけ
られなかった事に本当に後悔している。

あの時、口から出かかって、結局声に出せなかった言葉はなんだろうと、寺から
戻って一晩中ずっと考えてたけど、思い出せない。旅から戻ってやっと分かった。

出来る事ならもう一度、チョモランマまで行って彼女に「ありがとう。」と伝えたい。
以上!

カテゴリー: PENTAX 645D, チベット2011   パーマリンク

ロンボク寺の彼女 への10件のコメント

  1. BOSS より:

    今までの貴殿のブログの中で、私の中では名作です。
    記事も写真も気に入りました。
    シリーズの〆にピッタリです。

    忘れてました、

    ありがとう。

  2. turumar より:

    「ありがとう。」が届くといいですね。
    我上辈子钱你~。

  3. 孔雀 より:

    手を振って追いかけてきた彼女はきっと
    ナイチンゲール症候群では?と思った。

    • BOSS より:

      なるほど、転移性恋愛 とも言える。
      恋愛感情には変わりない。
      チョモランマの恋、、、切なすぎる。

      • ぱふぱふ より:

        なぜか性転換に見えてしまいました。
        恋愛感情かどうかはわかりません。。。。

    • ぱふぱふ より:

      一目ぼれという可能性も捨てきれないですよね。。。

  4. もっさん より:

    雑音の無い世界!
    コレは一生忘れられない~

    ドラマは映画やTVでみる以上です。

    • ぱふぱふ より:

      帰ってきてからも、時々思い出します。
      一生忘れられないかもしれませんね。

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